借金の貸主が死亡した場合、借りた方は誰にいくら返済すればいいの?

弁護士12

個人間でお金の貸し借りを行った場合、完済前にどちらかが亡くなってしまうということがあり得ます。もし、債権者が亡くなった場合、債務者は遺産を相続した人にお金を返済しなければなりません。遺産相続人が複数いた場合は、相続の割合に応じてそれぞれの人に返済しなければならず、かなり大変になります。

債権者が死亡したからといって、借金がなくなるということはあり得ないので注意しましょう。


相続人が複数いた場合は債権も分割される

債権者が亡くなったと知らされたら、債務者は具体的にどうすればいいのでしょうか。とりあえず、自分から動く必要はないでしょう。というのは、誰がどういった財産を相続したのかわからない状態で債権者の家族に一方的にお金を返すと、後々、返金請求を行わなければならなくなる可能性があるからです。

どういうことかというと、たとえば、亡くなった債権者には妻と子供が一人いたとします。その場合、債権者の財産は妻と子供が半分ずつ相続することになります。すると、債権者が遺言書などで「債権はすべて子供に譲渡する」といったことを書いていない限り、債権も半分ずつ引き継がれるのです。

つまり、もし債権者がAさんという人に100万円を貸していて、まだ返済されていない状況であれば、妻と子供は50万円ずつ、その債権を相続するということになるのです。

したがって、債権者が亡くなったあと、債務者のAさんが債権者の妻に宛てて100万円を返済し、完済したつもりになっていたら、その後、債権者の子供から「私が50万円の債権を引き継いだので、返済するように」という書類が送られて困ってしまうということがあり得るのです。

一般的には、このようなケースになった場合、債務者から100万円を受け取った妻が子供に50万円を渡し、返済は終了となりますが、妻と子供の折り合いが悪い場合は、妻から子供に対してお金が渡らないということも十分考えられます。

もし、特定の相続人にお金を返し過ぎてしまったという場合は、不等利得返還請求をしなければなりません。

多く支払った分を自分に返してほしいという請求ですが、受け取った人間がのらりくらりと言い訳をし、返還しなかった場合は、最終的に裁判ということも考えられます。

債務者にとって、非常に面倒なことになってしまうので、債権を誰がいくら相続したのかということの確認はとても重要なのです。

基本的には、債権を相続した人間の方から、「私はあなたの債権をこの金額だけ相続したので、支払ってください」という書面が届くはずなので、文書が届いてから返済するようにしましょう。くれぐれも、自己判断で一方的に相続人に返済してしまわないよう、注意が必要です。

また、もう一つ大事なのが、債権を相続したと名乗る人間が書類を送ってきた場合、その人の身元を確認するということです。誰と誰がお金の貸し借りをしているという情報を持っていれば、赤の他人であっても、相続人を名乗って債務者に請求することが可能だからです。

こうした詐欺にだまされないよう、債権を相続したといってきた人間に対して戸籍謄本など亡くなった債権者とのつながりがわかるものを要求し、チェックするようにしましょう。

相続人がたくさんいて、それぞれに返済するのが面倒という場合

相続人が二人程度であればいいですが、亡くなった債権者に子供が10人近くいて、それぞれに借金を返すなんて面倒だというケースもあるかもしれません。面倒というだけではなく、毎月分割返済という形をとるなら、銀行振り込みの手数料も高額になってしまいます。

こういう場合は、相続人たちに対して「一人を代表者として、その人に全額返済すればいいという形にしてほしい」と求めることが可能です。相続人の方も、それぞれが一人の債務者に督促状を送ったり、電話をかけたりしなければならないといった手間が省けるのでメリットがあります。

債権者の家族ではない人が「自分が債権を相続した」といってきたら?

弁護士25

亡くなった債権者は天涯孤独で家族はいなかったはずなのに、財産を相続したという人間があらわれて、「今後は私に借金を返せ」という書面を送ってきたという場合、どう対処すればいいのでしょうか。基本的に、亡くなった人の財産を相続できるのは家族ですが、家族がいない場合は「特別縁故者」と呼ばれる人が相続する可能性があります。

特別縁故者は、亡くなるまで生活を共にしていた人やずっと世話をしていた人が対象となり、具体的には内縁関係にあった人が当てはまります。こういった人は、当然、戸籍謄本を送らせても亡くなった債権者の家族として名前は載っていないので、戸籍謄本で相続人と確認することはできません。

そのため、戸籍謄本以外で相続人であることを証明する書類を送ってもらうようにしましょう。もし、相続人であると証明する書類を送ってこない場合は基本的に無視して構いません。

それでも一方的に、借金を返済するようにいってきた場合は、弁護士に依頼して解決を図るようにしましょう。


誰に返していいのかわからない場合は

債権者の財産を誰が相続したのかまったくわからず、また、連絡もないので返しようがないという場合はどうすればいいのでしょうか。こうしたケースでも、その時点で借金がチャラになるということはありません。そのままずっと返済せずに10年以上経過すれば、債務を時効にできる可能性が高いですが、人からお金を借りたまま返さないのはどうも気持ちが悪いという人もいるでしょう。

こういう場合は、弁済供託を行うといいです。弁済供託とは、法務局に「本来、債権者に返済すべきお金を預ける」というもので、全額納付すれば借金を完済したと見なされます。もし、弁済供託を行ったあとで、「私が債権を相続した」という人が現れたとしても、「弁済供託を行ったので、還付申請をして供託金を受け取ってください」といえば大丈夫です。

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生前、債権者が「自分の死後は借金はチャラにする」といっていた場合

弁護士21

友人同士でお金の貸し借りを行った場合、貸した方が「もし俺が先に死んだら借金は返さなくていいよ」といってくるかもしれません。この場合、債権者が亡くなったら債権は消滅することになりますが、当然、口約束だと相続人に対して証明することが難しく、かなりもめることが考えられます。

そうならないよう、貸主が「自分の死後は借金はチャラ」といってきたら、それを文書として残してもらうようにしましょう。ただ、仮にそういった文書が作られたとしても、債務者が「債権者の奥さん、あるいは子供に全額返済したい」と考え、その通りにすることは特に問題ありません。